東京地方裁判所 昭和47年(借チ)21号 決定
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〔主文〕1 申立人・相手方間の別紙目録記載の土地賃貸借契約の目的を堅固建物所有に変更する。
2 右土地賃貸借契約の借地期間を昭和六八年一月三一日までと改める。
3 申立人は相手方に対し、金一〇〇万円を支払え。
〔決定理由〕(当裁判所の判断)
一 ……本件の資料によれば、本件土地附近はその隣地に相手方所有の鉄筋コンクリート造六階建の建物が存在するほか、若干の堅固建物が散在するが、概観的には二階建程度の木造家屋が密集している状態で、また表通りからやや奥まつた場所でもあるため、近い将来建物が高層化される状況にあるとは認めがたいが、附近の木造家屋は比較的古い建物が多く漸次改築の傾向にあるところ、最近の新築建物は本件土地附近が商業地域、準防火地域、第四種容積地区に指定されていることもあつて、多くは高層ではないが三階建程度の堅固建物であり、今後この種の建物が増加することが明らかであると認められること、申立人の計画する改築建物も鉄骨コンクリート造三階建の居宅、作業所であつて、本件土地附近の状況から相当なものであること等を綜合すると、本件賃貸借契約は現に締結されるとすれば堅固な建物の所有を目的とすることを相当とするに至つたものと認めるのが相当である。
相手方は本件土地を含む台東区竜泉三丁目二三八番一宅地七六六、五七平方米について将来、自己で使用する必要があり、本件賃貸借契約については期間満了時に契約更新を拒絶するつもりであるので、本件申立は棄却すべきであると主張する。しかしながら、本件の資料によれば、かりに申立人が本件建物の改築をしなくとも、契約期間満了時である昭和五八年二月一日頃までに右建物が朽廃等によつて滅失するとは認めがたく、したがつて契約更新の拒絶にはいわゆる正当事由の存在が必要であるところ、将来の正当事由の存否を現時点で的確に判断することは不可能であるが、申立人が本件契約締結当時から本件建物で活版地金の製造業を営んでいること、右業務の性質上代替地を求めることが困難であること、相手方は前記一筆の土地が申立人その他一〇数名の者らに分割して借地権が設定されていることを知つてこれを買い受けたものであること等の事情を綜合すると、右正当事由存在の可能性はきわめて少ないものと考えられ、相手方の右主張は採用できない。
次に、相手方は申立人の工場からの煙害による損害について言及するが、申立人の計画する建物の規模からすると、その業体は従前と変らないものと考えられ、また申立人は新築工場においては集塵装置等煙害の防止設備を新たに設置するというのであり、その具体的計画、効果等は不明であるが、かりに相手方が損害を蒙るとすれば、これは本件とは別個の問題として解決すべきものである。
以上のとおり、本件申立は後記条件のもとに認容されるべきである。
二 附随処分
鑑定委員会は、借地条件の変更にともない契約当事者の利害の調整を図るため申立人に対し財産上の給付を命ずべきものとし、その額は、借地条件変更による借地権価格の上昇分として本件土地の更地価格三、三平方米当り三八万円の七、五%合計八三三、六〇〇円および現借地契約の期間満了時に相手方が得べかりし更新料(借地権価格=更地価格の七三%の一〇%)の現価合計四五三、〇〇〇円を合算した一二八万円(一万円未満切すて)をもつて相当とする、との意見書を提出した。
当裁判所も借地条件の変更にともない当事者間の利害の衡平を図るため申立人に対し財産上の給付を命ずべきものと考えるが、その額の算定について借地権価格の上昇分に得べかりし更新料を合算すべきとする鑑定委員会の意見には疑問がある。すなわち、借地条件の変更により借地権価格が上昇するのは借地の有効利用度が増加することによるが、右増加分の中には堅固建物所有目的の借地契約の期間が非堅固建物所有目的のそれより長期であることも含まれているものと解され、さらに期間延長の対価と思われる更新料の支払を命ずることは申立人に二重の負担を強いる結果になる。
よつて、本件財産上の給付額を、鑑定委員の意見、従前の決定例および後記のとおり本件借地期間については一〇年間延長するのみであることを参酌し、鑑定委員会の意見による本件土地の更地価格の約九%に当る金一〇〇万と定める。
前記のように相手方が契約期間満了時に更新拒絶を強く希望していることに鑑みると、借地条件変更にともなう借地期間の延長は最少限にとどめるのが当事者の利益の衡平上相当と考えるので、本件借地期間を契約締結の日である昭和三八年二月一日から三〇年(昭和六八年一月三一日まで)と改めることとする。
賃料については、昭和四七年六月分から改定されたものであることを考慮し、鑑定委員会の意見に従つて、改定の必要はないものと認める。 (河村直樹)
目録
(一)借地権の内容
1目的土地
東京都台東区竜泉三丁目二三八番一
宅地 七六六、五七平方米
のうち 九六、六九平方米
2当事者
賃貸人 相手方
賃借人 申立人
3目的
非堅固建物所有
4期間
昭和五八年二月一日まで
5地代
一ケ月六、四二五円